蘇るフレンチ・ブルー伝説

フランスのスポーツカーというとなじみが薄いかもしれないが、同国はF1やラリーやルマン24時間レースなど、モータースポーツ大国であり、数々の名車を生み出してきた。その伝統は途切れていない。いま、アルピーヌA110というすばらしいスポーツカーを送り出した。

Photo TONY TANIUCHI Text Fumio Ogawa

フランスのスポーツカーというとなじみが薄いかもしれないが、同国はF1やラリーやルマン24時間レースなど、モータースポーツ大国であり、数々の名車を生み出してきた。その伝統は途切れていない。いま、アルピーヌA110というすばらしいスポーツカーを送り出した。

アルピーヌ
アルピーヌA110のオリジナルは、1963年に登場し、1973年の世界ラリー選手権で総合優勝をするなど、ラリーシーンで活躍。その名を世界にとどろかせた伝説のスポーツカーだ。山並みを背負う姿がりりしい。

スポーツカーには、大きく言うと、二つの楽しみがある。

一つは見せびらかす楽しみ。もう一つは、アルピーヌA110に代表される、わかる人にはわかるクルマに乗る、ちょっとひそやかな楽しみだ。愉悦という言葉がもっとぴったりくるかもしれない。

A110はフランスの生んだスポーツカーだ。工場の生産キャパシティーの問題から、デリバリー数が限られているので希少性も高い。乗っていると、クルマ好きが「あ、アルピーヌだ」と振り向く。イタリア製のスーパースポーツカーだって、今やそんなことは起きない。そして希少性だけではない。スポーツカーとして、注目すべき存在である。

アルピーヌは1950年代から70年代にかけて、優れたスポーツカーを作り、モータースポーツにも積極的に参加した。ミッレミリアを始め、世界ラリー選手権やルマン24時間レースでの高成績で名声を確立したのだ。

フレンチ・ブルーのA110
半世紀の時を超えて、現代に蘇ったフレンチ・ブルーのA110。四つのヘッドランプを配したフロント、コンパクトなLEDで構成されたX形に点灯するテールライトなど、伝説のA110のDNAが宿る。

初代A110は往時のアルピーヌの代表車種である。62年から77年まで作られた二人乗りのスポーツカーで、社名「アルピーヌ」の通り、欧州アルプスを始めとする山岳路のレースで勝つという目的を十二分に達成した。

現代のA110は、名前だけ借りてきたわけではない。コンパクトな車体、運転しての楽しさ、そしてスタイル。美点をすべて継承したうえで、洗練させている。

現在のアルピーヌA110は、1.8リッターエンジンをミッドシップしている。乗ると、スポーツカーの真価とは、エンジンの気筒数や排気量で決まるものではないとわかるはずだ。

252馬力のパワーは1.1トン程度の軽量ボディーには十分過ぎるほどで、静止から時速100キロまでは4.5秒で加速する。

操縦性はシャープで、山道ではこのうえなく楽しい。イタリアやイギリスやドイツのスーパースポーツカーと同等の走りのよさが、全長4.2メートルというコンパクトなボディーで得られるのも、大きな特長である。

伊豆のワインディングロードを走るA110
山岳路や市街地、そしてレーストラックで走りを鍛え上げた伝統を持つA110。日本の都市部の道路でも、低い山々が連なる伊豆のワインディングロードでも、コンパクトで軽量ボディーならではの、気持ちのいい走りを実現する。

クオリティー感は高い。とりわけインテリアは、人工スエード巻きのステアリングホイールや、クロスステッチのレザー張りのバケットシート、それにレーシングカーのようなテレメーターが備わる。スポーツカーとして不足は一切ない。

アルピーヌA110に初めて接した時、作家の故・伊丹十三氏のことを思い出した。当時、日本人はほとんど知らなかった、しかし欧米ではとても評価が高かったロータス・エランという小型スポーツカーに東京で乗っていた。有名ではない本物を愛する、というのが恐らく伊丹十三氏の価値観だったのだろう。

これみよがしでない外観のアルピーヌA110に乗っている人にも同様のカッコよさを感じる。人生の楽しみを求めていたら、その答えがこのクルマだと知っているからだ。大人のためのスポーツカーである。

ALPINE A110 PURE
ボディー:全長4205×全幅1800×全高1250㎜
エンジン:1.8ℓ 直列4気筒直噴ターボ
最高出力:185kW(252ps)/6000rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2000rpm
駆動方式:MR
トランスミッション:7速AT
価格:7,900,000円~

●アルピーヌ コール TEL 0800-1238-110

※『Nile’s NILE』2019年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

What is luxury?

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Sustainable, SDGs, ESG...... these terms are becoming a natural part of our daily lives. Many brands and companies have already begun to take this stance, as individuals and society as a whole are expected to become more aware of the importance of sustainability. In "NILE PORT," we would like to rethink and re-present luxury in the current era, sharing our values with brands and readers who have a progressive awareness.