鳴門海峡

徳島県、鳴門。古くからの四国の玄関口である。世界一の大きさともいわれる、大きな渦潮が発生する鳴門海峡には、大鳴門橋が架けられ、神戸淡路鳴門自動車道で本州と結ばれている。船で海峡を渡っていた時代にはこの鳴門海峡は通らず、潮の流れが穏やかな小鳴門海峡を南下して、撫養港(現・岡崎海岸)へ上陸した。だから撫養には、四国にやってきた人も、阿波の名産である藍や葉たばこ、塩なども集まってきた。撫養港から延びる撫養街道を行けば、四国八十八カ所霊場の1番札所である霊山寺へとたどり着く。人や物が渦潮のように激しく行き交った四国の玄関口を、新しくなったキャデラックCT6とともに旅した。

Photo TONY TANIUCHI Text Nile’s NILE

徳島県、鳴門。古くからの四国の玄関口である。世界一の大きさともいわれる、大きな渦潮が発生する鳴門海峡には、大鳴門橋が架けられ、神戸淡路鳴門自動車道で本州と結ばれている。船で海峡を渡っていた時代にはこの鳴門海峡は通らず、潮の流れが穏やかな小鳴門海峡を南下して、撫養港(現・岡崎海岸)へ上陸した。だから撫養には、四国にやってきた人も、阿波の名産である藍や葉たばこ、塩なども集まってきた。撫養港から延びる撫養街道を行けば、四国八十八カ所霊場の1番札所である霊山寺へとたどり着く。人や物が渦潮のように激しく行き交った四国の玄関口を、新しくなったキャデラックCT6とともに旅した。

鳴門の渦潮
鳴門の渦潮は、大鳴門橋の真下で発生する。春と秋の大潮時に最大となり、直径20mにも達する渦潮は、世界一といわれている。1日のうちで潮流が最速となる時間帯に最も迫力ある渦潮ができる。しかし、潮の流れない時間帯には渦潮は発生せず、見ることはできない。

徳島県鳴門―古くから、東から来る人にとって四国への玄関口である。現在、淡路島との間の鳴門海峡には、大鳴門橋が架けられ、1日約2万5000台ものクルマが行き交っている。その大鳴門橋の下には、渦潮が音を立てうごめいている。世界三大潮流の一つとされる鳴門の渦潮は、大きいもので直径20m、潮の流れは時速20㎞にもなり、世界一の大きさと速さを誇るという。これだけ大きくて速い渦潮が発生する秘密は、鳴門海峡独特の海底の地形と、潮流にある。そのメカニズムはこうだ。まず、太平洋側が満潮となり、紀伊水道から入ってきた海水は約6時間かけて淡路島を1周し鳴門海峡に流れ込む。

この時、淡路島の南岸ではすでに干潮になっており、今度は瀬戸内海に集まった多方向からの海水が水位の低い太平洋側へ出ようと、鳴門海峡に一気に押し寄せる。つまり、鳴門海峡を境目に海面に高低差が生じ、この落差が高速の潮流を生み出す。加えて鳴門海峡が約1.3㎞と狭いことと、海底がV字形に深く落ち込み、最深部は90mにも達するように起伏に富んでいるため、流れの速い潮が遅い潮にぶつかり、渦巻が発生するのだ。

だから鳴門海峡の最も狭い場所に渦潮ができるのである。今は、大鳴門橋が架かっているから渦潮を真下に見ながら通れるが、船で渡っていた時代からここ鳴門は、四国の玄関口として機能していた。それは、なぜか。潮の流れが穏やかな小鳴門海峡を利用したからである。小鳴門海峡は、鳴門海峡の西側、島田(しまだ) 島や大毛(おおげ) 島と四国本土の間にあるため、運河のように流れは穏やか。多くの船は激流の鳴門海峡を通ることなく、小鳴門海峡を南下して撫養港を目指した。

16世紀から交通の要衝となっていたこの撫養港を機能的にしたのは、徳島藩の藩祖である蜂須賀家政だ。家政は、阿波へ入国したばかりの1585(天正13)年に、淡路の福良から鳴門へ渡海する船頭10人を選んで渡海の役につかせ、1591(天正19)年には彼らの家を岡崎に移転。阿波の入り口である撫養に、“よき足”を確保したのである。明治に入り御番所が廃止された後も、そのほとんどは船問屋に所属し、渡海業に携わって、撫養港の発展を支え続けた。その後も、さまざまな海運業の汽船や西洋型帆船が入港し、盛況を呈した。

  • ホテルリッジとキャデラック ホテルリッジとキャデラック
    キャデラックの最上級セダンにふさわしい凛とした風格と美しさをたたえるCT6で、鳴門の島田島にあるホテルリッジに乗りつける。スタイリッシュなホテルの建物とCT6が美の競演を果たす。国立公園の中にたたずむホテルリッジは、わずか10部屋のみの“プライベートオアシス”とうたう大人のリゾートだ。
  • ホテルリッジの大浴場 ホテルリッジの大浴場
    ホテルリッジの大浴場のデッキからも、鳴門海峡や大鳴門橋を望める。地下1500mからくみ上げた単純泉は、とろみのある肌にやさしい温泉。長時間ゆったりつかれば、旅の疲れが一気に癒える。
  • 四国八十八カ所第1番札所 霊山寺の本堂 四国八十八カ所第1番札所 霊山寺の本堂
    江戸時代には“歩き遍路の道”として、多くの人々が行き交った撫養街道沿いに立つ、四国八十八カ所第1番札所 霊山寺の本堂。天平年間に行基が開いた高野山真言宗の寺で、本尊は釈迦如来。無数の灯籠に明かりがともっていて、幻想的だ。また、本堂の奥殿に鎮座する秘仏の釈迦如来は空海作だという伝承がある。
  • 霊山寺の山門とキャデラック 霊山寺の山門とキャデラック
    空海の足跡をたどる、四国八十八カ所霊場めぐりの全行程は約1400㎞、365里に及ぶ。いわゆる“お遍路”は、この霊場を札所番号の順に巡拝することだ。その1番札所である霊山寺の山門。20インチのホイールを履いた堂々たるキャデラックの最上級セダンCT6を前に置いてみると、“一番同士”の風格と品位を感じさせる。
  • ホテルリッジとキャデラック
  • ホテルリッジの大浴場
  • 四国八十八カ所第1番札所 霊山寺の本堂
  • 霊山寺の山門とキャデラック

もう一つ、家政が整備したのが阿波の五街道。その一つの撫養街道は、撫養港から吉野川北岸を西走して、池田町で五街道の一つ伊予街道に交わる67.3㎞の道。江戸時代中期以降、四国八十八カ所を巡礼するお遍路さんは、まず撫養港に上陸し、撫養街道を歩いて第1番札所の霊山寺に向かった。そのため撫養街道は、“歩き遍路の道”として、また、阿波の名産である藍や葉たばこ、塩を撫養港まで運ぶ“商の道”として、人や物が激しく往来した。

今は、静かでゆったりとしたたたずまいの、撫養の港や旧街道、そして小鳴門海峡。四国の玄関口、交通の要衝として在り続けた鳴門の、土地に刻まれた記憶をたどり、キャデラックCT6を走らせた。

海のそばのドライブはいいものだ。一番いいのは、終点がないからかもしれない。山道はそのうち山の反対側に出てしまう。それに対して、周囲の景色が変わっていくのを眺めながら、クルマをどこまでも走らせていく感覚こそ、醍醐味だと思う。

今回、新しくなったキャデラックCT6で、淡路島から徳島の鳴門までドライブした時、サンフランシスコからハイウェー1という道を通って、ゴルフ場で知られるペブルビーチへと出かけたことを思い出していた。米国でCT6はひときわ存在感のあるモデルだ。キャデラックのセダンの最高峰であるばかりか、日本車とドイツ車とも違う、独自の個性を持ったエレガントさとスポーティーさをバランスさせたスタイリングが大きな理由の一つだろう。

実は今回、行く先々でキャデラックが話題になったのである。「今のキャデラックってこんな姿なんですね。スタイリッシュですねえ」という意見が多かった気がする。

本家松浦酒造場とキャデラック
静かながら歴史を感じさせる撫養街道の旧道沿いに、1804(文化元)年創業の本家松浦酒造場はある。地元で200年以上愛されている代表銘柄の「鳴門鯛」を買いに、全長5230㎜のキャデラックで細い旧道を入ってきても大きさを感じず、まるでコンパクトなクルマを運転しているような体にフィットした感覚で走れる。

出かけた先は、鳴門の中でも最も淡路島に近い大毛島と島田島だ。島と島、島と四国本土は橋で結ばれている。中でも1985年に開通したつり橋の大鳴門橋が有名である。

1629mの橋長を走り、淡路島から大毛島へと向かう途中、眼下に渦潮を見ることができる。キャデラックCT6からも潮流が大きくぶつかり白波が立つさまをちらりと眺めることができた。自然の力を感じて、気分が沸き立つようだ。

流れるという言葉を聞くと、クルマ好きはすぐ空力を連想してしまう。6月に日本で発売された新しいCT6は、実際に流麗なシェイプをしている。3.6リッターV6エンジンに、新たな10段オートマチック変速機の組み合わせが新型の特徴で、神戸から淡路島を横断して鳴門までなど、一切の疲労を感じさせない。重厚なボディーとよく動く足回りによる乗り心地の快適さも特筆ものだ。

小鳴門海峡
鳴門海峡のバイパスのような存在である小鳴門海峡。四国本土と大毛島、高島、島田島との間に位置する海峡である。波はかなり穏やかで、海峡一帯ではわかめの養殖が盛んだ。小鳴門、あるいは撫養の瀬戸とも呼ばれる。船の時代には、流れが激しい鳴門海峡を渡るのではなく、この小鳴門海峡を南下して、撫養港へ上陸した。

鳴門の島田島は高低差が大きいところが魅力である。中高速コーナーが連続するワインディングロードを上がっていくと、景色が開けて、瀬戸内海の景色を眼下に楽しむことができる。

ここには瀬戸内を望む国立公園の中にホテルリッジがたたずむ。平屋のビラタイプの宿泊棟が並び、それらをクルマ寄せのあるレセプションからは、日本伝統の黒塀のような目隠しでうまく隠している。そのデザインがまた風情を生んでいるのである。そこにキャデラックCT6を乗りつけると、堂々たる美丈夫ぶりを見せてくれる。

CT6でのドライブで“寄港地”を見つけたら、部屋のデッキから鳴門海峡をゆっくり眺めるもよし、やわらかな温泉で湯あみをするのもよし、ホテルの名に由来するカリフォルニアワイン「リッジ」とともに美食を楽しむもよし。

海の周りの道にほぼ終わりがないように、CT6に乗っていたら、本当は止まるのが嫌になるかもしれない。いい旅とはそういうものだ。

岡崎海岸とキャデラック
かつて四国の玄関口として、人や物が行き交い、活況を呈していた撫養港があった場所。今は、岡崎海岸として、大鳴門橋を眺めながら桟橋では釣りを楽しんだり、砂浜で遊べるように整備されている。残念ながら撫養港は、1998(平成10)年に明石海峡大橋が開通したことで、その役割を終え、廃港となった。

Cadillac CT6
ボディー:全長5230╳全幅1885╳全高1495㎜
エンジン:3.6ℓ V型6気筒DOHC
最高出力:250kW(340PS)/6900rpm 
最大トルク:386N・m(39.4kg・m)/5300rpm
駆動方式:AWD 
トランスミッション:10速AT
価格:10,260,000円

●GMジャパン・カスタマー・センター TEL0120-711-276

※『Nile’s NILE』2019年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

What is luxury?

What is luxury?

Questioning this has now become synonymous with confronting the times. We are now witnessing a transformation of values on a global scale.
Sustainable, SDGs, ESG...... these terms are becoming a natural part of our daily lives. Many brands and companies have already begun to take this stance, as individuals and society as a whole are expected to become more aware of the importance of sustainability. In "NILE PORT," we would like to rethink and re-present luxury in the current era, sharing our values with brands and readers who have a progressive awareness.