ART

ANDY WARHOL × リューズ 飯塚隆太

料理は瞬間の芸術だ。その記憶は何十年も我々の五感の中に残り続ける。その瞬間に全エネルギーを注ぐ五人の料理人が、ポップアートの天才アンディ・ウォーホルの世界に挑んだ。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

料理は瞬間の芸術だ。その記憶は何十年も我々の五感の中に残り続ける。その瞬間に全エネルギーを注ぐ五人の料理人が、ポップアートの天才アンディ・ウォーホルの世界に挑んだ。

リューズ 飯塚隆太
上から見えるのは、焼いた仔羊だけ。しかし実は、下にラタトゥイユが置かれている。しかもそのラタトゥイユは、トマト風味で煮たナスを、歯ごたえを適度に残したパプリカ、ズッキーニの細切りで包んだ仕立て。“ナス、パプリカ、ズッキーニのトマト風味煮込み”という郷土料理としてのラタトゥイユを、彩り鮮やか、かつ食感にコントラストをつけて再構築したものだ。単純な見た目に反して、料理に込められた意図と技術は実に深い。まさにガストロノミーと呼ぶにふわさしい洗練を備えた一品だ。

つまり、この料理は、まったく「ただの焼いた仔羊」ではない。プロの発想と技術で、伝統料理をガストロノミーに昇華させた一品なのだ。さらに言えば、飯塚さんの歩んできた道のりも反映している―若いときにフランス料理に憧れ、必死で技術と知識を身につけ、フランスに行って郷土性や歴史に感動した。そうした経験がこの料理のベースにはある。

「この料理を見たときに『なんだ、ただの焼いた仔羊か』と判断する人もいれば、視点を変えて『下にラタトゥイユが隠されている、凝っているな』と気づく人もいるでしょう。さらに、『ラタトゥイユと仔羊という伝統を踏まえたうえで、それを洗練させている』ということにおもしろさを感じる人もいるかもしれない」
 
こうした“食べる側の受け取り方”を、料理人はコントロールできない。

「ウォーホルのアートも同じでしょう? 『写真に色をのせただけ』と、アートだと認めない人もいれば、『大量生産の時代を斬新に表現している』と感動する人もいる」
 
今回、ウォーホルの言葉を深く掘り下げてインスピレーションを得た飯塚さん。「苦労しましたよ! お題をもらってから2週間以上、このことがずっと心に重くのしかかって……。それに実はウォーホルのことは深くは知らなかったので、YouTubeでたくさん勉強しました(笑)」
 
最終的にこの料理を思いついたのは撮影の3日前。「今は解放感しかない(笑)。あとは、この料理の写真を見た人に、すべてをゆだねます」

飯塚隆太 いいづか・りゅうた

飯塚隆太 いいづか・りゅうた

1968年、新潟県生まれ。専門学校卒業後、「第一ホテル東京ベイ」「ホテル ザ・マンハッタン」などを経て、94年「タイユバン・ロブション」の部門シェフに就任。97年に渡仏し、「トロワグロ」「ジャンポール・ジュネ」などで修業。帰国後、ジョエル・ロブション氏の系列店で研鑽を積み、2005年「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のシェフに。11年「リューズ」をオープン。12年版『ミシュランガイド東京』で一つ星、13年版以降は二つ星の評価を得ている。

●リューズ
東京都港区六本木4-2-35 アーバンスタイル六本木B1F
TEL03-5770-4236
restaurant-ryuzu.com

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