奥深きハンバーグの世界3

慈華の田村亮介氏が紹介するのは、直径25cm強の大きな蒸しハンバーグ。食感は柔らかいが、旨みが強い。そのギャップにインパクトを感じる一品だ。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

慈華の田村亮介氏が紹介するのは、直径25cm強の大きな蒸しハンバーグ。食感は柔らかいが、旨みが強い。そのギャップにインパクトを感じる一品だ。

「こうすると肉の生地と水が分離しません。肉の生地がしっかりと水を抱き込んでくれます」
なお、この工程は二人で行うのが理想だが、一人の場合は水を少し加えては手早く混ぜる作業をくり返すとよい。

この後、風味づけに陳皮(みかんの皮を乾燥させた中華素材)を加える。
そしてつなぎとして用いるのは、主に長芋。長芋はざく切りにしてから包丁の腹でまな板に押し付けて潰し、そのまま包丁をすべらせて練る。こうして長芋を、おろしたものとたたいたものの中間の状態とする。

「長芋はすりおろすのではなく、今回のように若干固形が残っている方が食感のアクセントになります」

出来上がった生地は、サラダ油をぬった大皿に平らに伸ばし、蒸し器へ。肉の厚さは中まで火が入りやすいよう1~1.5cm、厚くても2cmとする。
蒸し時間は、家庭の蒸し器で15分間ほど。長時間蒸さないことで、肉汁が流出しない、柔らかい仕上がりが実現する。

蒸し上がったら、フェンネル(茴香:ういきょう)とねぎのみじん切りを中央にこんもりとのせ、高温に熱した油をジュッとかける。すると、両者の香りが立ち上る。このフェンネルと、生地に練り込んだ陳皮の香りが、蒸しハンバーグを一気に中国料理の印象に持っていく。
仕上げに中国のたまり醤油やオイスターソース、はちみつの入ったタレをかければ完成だ。

見た目は大きいが、ペロリと食べきってしまう。柔らかく、なめらかで、スルスルと食べ進められるが、肉をかむ満足感もあるので最後まで食べ飽きない。中国料理の肉料理の新たな魅力を発見できる一品だ。

ハンバーグ レシピ 3へ続く

慈華 田村亮介氏

田村亮介 たむら・りょうすけ
1977年、東京都生まれ。中国料理店を営んでいた父の影響で料理人を志す。「翠香園」や都内中華料理店を経て、「麻布長江」へ。2005年、台湾の四川料理店・精進料理店で研修。06年、「麻布長江 香福筵」の料理長に就任し、09年には同店のオーナーシェフに。19年4月、建物の老朽化に伴い閉店。同年12月、「慈華」をオープン。20年には『ミシュランガイド東京』で一つ星の評価を得た。

●慈華
東京都港区南青山2-14-15 五十嵐ビル2F
TEL 03-3796-7835 itsuka8.com

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What is luxury?

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