海外へ自由に羽ばたけるときが、ついにやってきた。さて、どこに旅しようかと悩んでいる人も多いに違いない。数年ぶりの海外旅行はまた格別だろう。そんな方々にぜひおすすめしたいのが、カナダの「オーロラの聖地」イエローナイフだ。
カナダ極北にあるノースウエスト準州の州都イエローナイフは「オーロラベルト」の真下にあり、無用な開発もされてこなかったがゆえに、漆黒の夜空にゆらめく極光を邪魔されることなく堪能できる。3泊すれば、オーロラを観賞できる確率は95%。一生に一度はオーロラをこの目で見たいと願っている人には、これ以上ない場所だ。都会の喧噪(けんそう)や明かりを離れ、静寂のなかで天上のカーテンに見とれる ─ 人が作り出すことのできない荘厳なドラマが待っている。
ただ、美しいオーロラを観賞するだけならほかにも見られるところはある。イエローナイフがほかの観光地と一線を画すもの、それは「再生」をめぐる物語だ。旅人たちは特別に、太古の昔から天かける光を見守ってきた先住民たちの物語と知恵を通して、傷ついてしまった自然と人との関係、また人と人との関係の再生の幻ヴィジョンを回復する旅へと誘われる。
この誘いに応えて、従来のオーロラ観賞を超えた価値ある旅を、日本のいくつかの旅行会社が各自のカラーを生かして企画している。そのハイライトをご紹介しよう。オーロラは、十人十色の再生の物語を呼び覚ます。旅人も旅先も再生へと導かれるイエローナイフへ、いざ出かけよう。
暁の女神を追いかける
冬の絶景 カナディアン・ロッキーとイエローナイフ 8日間
「オーロラ」の語源であるローマ神話の「暁の女神」アウロラは、バラ色の肌とブロンドの髪を持つ美神。太陽神アポロンの妹で、地上の生き物たちに光を与え、暗黒を取り去る力を帯びているという。その光と力に浴すべく、イエローナイフでは貸し切りキャビンやバスを利用し、女神のご機嫌に合わせて観賞時間を延長したり、場所を移動して観賞する「オーロラハンティング」をしたりと、一般のオーロラツアーでは味わえない、プライベートにアレンジされた至高のひとときに酔いしれることができる。この大気の発光現象をオーロラと名づけたのは、かのガリレオ・ガリレイとする説もあるなど、知識豊富な添乗員の説明に耳を傾ければ、歴史のロマンもきらめくだろう。そんなロマンあふれる旅はきっとグローバルユース ビューローがモットーとする「心の財産」となるに違いない。
●グローバル ユース ビューロー TEL03-3505-0055 www.gyb.co.jp
自然との共生にならう
〈Legendary Experience〉オーロラ・イエローナイフ&ナイアガラの滝 8日間
カナダの冬はオーロラだけでなく、ナイアガラの滝も美しく、氷瀑(ひょうばく)など自然の力に圧倒される。カナダは、その自然の力を大いに活用し、電力供給量の半分以上を水力発電に頼る、再生可能エネルギー先進国だ。その象徴とも言える「ナイアガラパークス発電所」は100年以上も発電所として稼働していたが、2021年に観光施設として「再生」。水力発電所の歴史を視覚的に学び、発電に使われた水をそのまま川に戻していたトンネルに入ることができる。エイチ・アイ・エスが提供するツアーではこの施設を訪れ、自然と共生するカナダの、付け焼き刃でないSDGsに触れられる。先住民が「雷とどろく水」と呼んだナイアガラの滝を後にしたら、今度はイエローナイフで“天ささやく光”に浴そう。太古の昔から、自然と共生してきた先住民の知恵にも大いに学べる。
●エイチ・アイ・エス クオリタ銀座店 TEL03-3538-7300 www.his-j.com/kaigai
カナダで滑る、見る
カナダ大自然紀行 カナディアンロッキー&イエローナイフ 9日間
スキーとオーロラのシーズンはぴったり重なる。海外スキー専門のフェロートラベルは確かな知識と実績に基づいて、個人や一般の旅行会社では難しいツアーを提供している。冬のカナダの絶景を堪能したければ、カナディアンロッキーでスキー滑走し、イエローナイフでオーロラを見るツアーがふさわしい。ロッキーの山々に降る極上の雪質「シャンパンスノー」を足裏に感じながら、白く静寂な針葉樹林のなかを滑走する感覚は、日本のスキー場では得られない圧倒的なスケールの贅沢だ。白銀の世界を後にしたら、今度は漆黒の夜空にゆらめくオーロラのカーテンに見とれよう。ロッキーの山々もそこに降る雪も、オーロラも、人には作り出すこともコントロールもできない、荘厳な自然現象だ。そのなかに身を置けば我を忘れると同時に、地球に生きる我を見いだすひとときとなろう。
●フェロートラベル TEL03-5489-5026 www.fellow-travel.co.jp
先住民とのつながり旅
冬の絶景を求めて イエローナイフとカナディアンロッキー 7日間
オーロラはカナダの誇る美しい自然現象だ。だがその美しさに加えて、先住民たちがとても大切にしている物語がある。オーロラはこの世を去った先祖たちであり、そのゆらめきは先祖たちが幸せそうに踊る姿なのだという。そんなオーロラを先住民の家「ティーピー」から見上げるひとときは、スピリチュアルで深い体験となろう。先住民の死生観に触れ、愛する者の死の悲しみが癒やされた旅人もいるという。昼には犬ぞりやスノーシューなど、先住民の文化や暮らしを体験し、人々と自然や土地との結びつきを実感できる。先住民の家族が経営する「オーロラビレッジ」では旅人を家族として迎える伝統が引き継がれ、互いの物語に耳を傾け合う。そのあたたかなおもてなしの心に触れれば、日本とカナダ極北の地との距離感は縮まるに違いない。
JTB TEL0570-070-489(旅の予約センター) www.jtb.co.jp