オーダーメイドの免疫療法

自己の免疫力を高め、がん細胞を攻撃する免疫療法の研究・治療に25年以上尽力してきた、新横浜かとうクリニック院長・加藤洋一氏。
昨今は日本のみならず、台湾、韓国、中国、マレーシア、ベトナム等アジア圏からも、彼の治療を求めて訪れる。最先端のがん免疫療法とは、そのさらなる可能性とは。加藤氏にその真髄を尋ねる。

Photo TONY TANIUCHI Text Ichiko Minatoya

自己の免疫力を高め、がん細胞を攻撃する免疫療法の研究・治療に25年以上尽力してきた、新横浜かとうクリニック院長・加藤洋一氏。
昨今は日本のみならず、台湾、韓国、中国、マレーシア、ベトナム等アジア圏からも、彼の治療を求めて訪れる。最先端のがん免疫療法とは、そのさらなる可能性とは。加藤氏にその真髄を尋ねる。

新横浜かとうクリニック院長 加藤洋一
新横浜かとうクリニック院長
加藤洋一
1992年日本大学医学部卒業、95年国立がんセンター研究所から本格的ながん研究に携わり、99年日本大学大学院医学研究科修了博士号取得。
2008年新横浜かとうクリニックを開設。横浜外科医会 副会長
キャリアの大半をがん研究に費やしてきた加藤医師のもとには最新の免疫療法を受けるために、国内外から患者が集まる。

1960年にフランク・マクファーレン・バーネットが免疫監視機構の理論を提唱して60年が経った今、樹状細胞を頂点にした免疫療法が広がっている。新しいがん治療法として注目を浴びる免疫療法は、体内の免疫細胞の数を増やし、がん細胞を攻撃する治療法だ。長年免疫療法を研究してきた新横浜かとうクリニックの院長・加藤洋一氏は、働き盛りの40〜50代にこう警告する。

「がんに対する免疫力は、20代の時がピーク、がん細胞を攻撃する免疫細胞であるリンパ球の数が平均で2400個あります。リンパ球は加齢で減少し、70代ではその数が1600個まで低下。がんへの攻撃力が弱まり、がんの発症率が高くなります。しかし40〜50代でもさまざまな要因でリンパ球数が減少すれば、がんを発症します」

40〜50代でも5人に1人が、がんを発症しやすい低リンパ球血症で、がんになる確率は非常に高くなる。
「家族にがんの方がいる場合は、血縁者のリンパ球数も少ない傾向があり、がんになる確率も高いのです」

こうした遺伝的要因に加え、自律神経のバランス不全もがん発症率に大きく関係するという。

「昼間の活動時間は交感神経が働き、夜の休んでいる間に副交感神経が働きますが、がん細胞は昼間、人間が活動し活性酸素が増えることで、刺激を受けて増殖をはじめます。一方がん細胞を攻撃するリンパ球は、交感神経が働いている昼間は休み、副交感神経が働く時間に働いてくれます。現代人の生活パターンは大別すると2つのタイプがあり、まず女性に多く『血圧が低めで体温も低い』。ストレスタイプと言って、副交感神経優位であり、このタイプは交感神経が働いている時間が短いため、免疫細胞が休む時間が短いので、リンパ球が疲れてきてうまく働かない。もう一つは男性に多い、仕事を夜中まで頑張ったりする過労タイプ。こちらは『血圧が高い』。交感神経が働いている時間が長いので、副交感神経の働きが弱くなり、リンパ球の働く時間が短いため、がん細胞の増殖が抑えられないのです」

受付のあるロビーはホテルのように高級感のある落ち着いた空間。 1時間ほどかかる治療も個室で受けられるため、ゆったりとリラックスして過ごすことができる。
受付のあるロビーはホテルのように高級感のある落ち着いた空間。
1時間ほどかかる治療も個室で受けられるため、ゆったりとリラックスして過ごすことができる。

加藤氏が今、もっとも力を入れているのがSKC免疫検査だ。

「免疫細胞の数とバランス、次に交感神経と副交感神経のスイッチの切り替え、この2点を検査することで、その人の体内の免疫状態を確実に把握でき、がんがなぜ増殖し、転移するかが見えてきます」

加藤氏がそのキャリアをかけて、長年研究を重ねてきたオーダーメイドの免疫療法は、がん以外の病気にも効果を発揮する。

「検査の結果、血中のたんぱく質などから、ほんの小さながんも発見できたり、その人が今後なりやすい病気の情報も得られるため、それに照準を合わせた免疫治療も可能になります。がんならどのがんになりやすいか、糖尿病や血栓の兆候なども分かりますので、生活習慣や食生活の指導も含め、がんができても抑えられる免疫力を維持できるように定期的な検査をしながら経過観察や治療を行っていきます」

台湾の大病院や大学にて毎月1~2回免疫細胞療法の講演を行っている加藤氏。台湾の製 薬会社Vectorite Biomedical Groupの顧問も務めている。写真は代表のAndy Pan氏と。
台湾の大病院や大学にて毎月1~2回免疫細胞療法の講演を行っている加藤氏。台湾の製
薬会社Vectorite Biomedical Groupの顧問も務めている。写真は代表のAndy Pan氏と。

働き盛りの40〜50代にとって、がんはもちろん生活習慣病も怖い。加齢や疲労で低下する免疫力を高いレベルに維持することで、そうしたリスクを回避することもできる。

「最近は40〜50代でまだがんなどになる前に、予防的に治療を始める方が増えています。50代の4人に1人は免疫細胞であるリンパ球数が少ない。そして半分以上の方が自律神経失調です。生活習慣や食生活の改善指導に加え、必要に応じてリンパ球を補うと、疲れやすさや不調が回復してきます」

成分採血装置により、アフェレーシスを行ない、血液中から身体に有害な中性脂肪、コレステロール、尿酸等を分離、採取する。
成分採血装置により、アフェレーシスを行ない、血液中から身体に有害な中性脂肪、コレステロール、尿酸等を分離、採取する。

なお、このリンパ球を補う治療と同時に、血中の酸化した脂肪分をとりだすこともできる。運動する時間がとれないがコレステロールが気になる、脳血栓などの危険性が高い人にとって、免疫力を上げると同時に、短時間でコレステロール対策ができる治療として、アフェレーシスの人気が高いそうだ。

患者の血液からとりだした免疫細胞を培養するのも外注にせず、すべてクリニック内で行うことで安全管理を徹底している。
患者の血液からとりだした免疫細胞を培養するのも外注にせず、すべてクリニック内で行うことで安全管理を徹底している。

加藤氏の治療を受けて不調を改善し、病気の芽を自己免疫力で摘めるようになった結果、仕事のパフォーマンスも向上し、引退を思い直した経営者や、会社を上場企業にまで引き上げた経営者も多いという。

「免疫療法は、免疫力低下を防ぐことで、より多くの病気を改善する可能性を秘めた治療です。まずは検査、そしてご自分の免疫状態を知り、必要な治療を必要に応じて受けることで、今の不調と未来の病気に備えていけば、人生100年時代を健康に、やりたいことをやれるのです」

※『Nile’s NILE』2019年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

What is luxury?

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Questioning this has now become synonymous with confronting the times. We are now witnessing a transformation of values on a global scale.
Sustainable, SDGs, ESG...... these terms are becoming a natural part of our daily lives. Many brands and companies have already begun to take this stance, as individuals and society as a whole are expected to become more aware of the importance of sustainability. In "NILE PORT," we would like to rethink and re-present luxury in the current era, sharing our values with brands and readers who have a progressive awareness.