SDGs×企業 持続可能な社会に向けて巡航する「ANAの翼」

ANAグループが奉じる「ESG経営」とは、事業活動を通して、「環境」「人権」「地域創生」「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」という四つの課題に取り組み、「社会的価値」「経済的価値」を創造しながら、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指すもの。SDGsの実践は、まさにこの「ESG経営」を推進する原動力の一つだ。その一翼を担うのが「サステナビリティ推進部」である。マネージャー・小原裕美氏に、活動の全容を語っていただいた。

Photo Satoru Seki Text Junko Chiba

ANAグループが奉じる「ESG経営」とは、事業活動を通して、「環境」「人権」「地域創生」「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」という四つの課題に取り組み、「社会的価値」「経済的価値」を創造しながら、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指すもの。SDGsの実践は、まさにこの「ESG経営」を推進する原動力の一つだ。その一翼を担うのが「サステナビリティ推進部」である。マネージャー・小原裕美氏に、活動の全容を語っていただいた。

ANA・小原裕美氏
小原 裕美(おばら・ゆみ)
2005年、ANA入社。成田空港支店旅客部勤務。’08年、レベニューマネジメント部へ。主に国際線の座席管理を担当。18年10月よりウィーン支店で総務・営業マネージャーを務める。この間、“SDGs先進国”の刺激を受け、日本への帰任発令時にサステナビリティ推進部の社内公募に応募。22年1月、同部に赴任。

この1月、サステナビリティ推進部に新戦力が投入された。“SDGs先進国”のオーストリアから着任した小原氏である。「ウィーン支店に約3年勤務する中で、自然とSDGsに関心を持つようになりました。“国連のおひざ元”という地域性もあって、みんな、意識が高く、知識も豊富。すごく刺激されました。ヨーロッパとのパイプを生かして仕事に取り組みたいと奮闘中です」と意欲的。

そんな小原氏のミッションは、「対話→取り組み→情報開示→対話……」のサイクルを回すこと。具体的には、機関投資家や国内外の有識者、お客様など、主に社外のステークホルダーとの対話を通じて、社会の情勢やANAグループへのニーズをキャッチ。それを各種取り組みに活かすと同時に、現在動いている活動の内容や進捗状況、実績などの情報を開示していく。さらにその開示情報をもとに対話を重ね……といった具合。

サステナビリティ推進部はつまり、このサイクルを回しながら、「社会とともに持続的な成長を目指すESG経営」の推進につなげる、という重要な任務を担っている。そこに併走するのがSDGsへの取り組み。達成に向けて2030年までを「行動の10年」と捉え、加速させている。

ではESG経営における四つの課題について、情報開示いただこう。

第一に「環境」では、航空機の運航で発生するCO2排出量の削減が最優先課題だ。目標は2050年度までに実質ゼロ! SAFという、植物油・糖・動物性脂肪・廃棄バイオマスなど、持続可能な供給源から製造される燃料の調達を中心に取り組む。SAFは化石燃料に比べて、原材料の収集から製造、輸送、使用など、すべての段階を通してCO2排出量が平均80%ほど抑制される。

現状、輸入に頼っているが、今後は「産業横断的にいろんな企業と協力し、国にも積極的に働きかけ、国産SAFの製造、普及を目指す」という。加えて省燃費機材や改良型エンジンの導入や、運航方式の改善によるCO2削減にも取り組む。「コツコツ創意工夫を重ねるとともに、新技術の開発にいち早く関わっていく構え」である。

また資源類の廃棄率についても、目指すは「2050年度までにゼロ」。空港ラウンジや機内で使用している使い捨てプラスチック製品を削減し、順次環境配慮型素材に変更していく。すでに木製カトラリー、紙製ストロー、サトウキビ由来のバガス素材を使った機内食容器などが導入され、“リデュース戦略”を積極展開する。

さらにフードロスについては「調理で出る残滓(ざんし)や油を堆肥(たいひ)や飼料へ100%リサイクルするのはもちろん、発展形として、リサイクルした堆肥で野菜のケールを育て、機内食に活用する、といった循環型の仕組みを導入しています」。

第二に「人権」では、「SDGsの中核に人権尊重の考え方がある」との認識の下で取り組みを進めている。

「2018年に日本で初めて『人権報告書』を発行したことが一つのトピックですね。人権尊重に関わる取り組みを社外に発信することを通じて、ステークホルダーとのコミュニケーションを促進させることが目的で、継続して発行しています。あとは例えば航空機が人身取引の手段に使われないよう、客室乗務員に疑わしい事例を発見・通報させる仕組みを設けるなどの防止策を講じています」

第三に「地域創生」は、人口減少と地域経済の縮小などを克服し、将来にわたって地域が成長していくことを目指す試みだ。自治体と協力して産直空輸を行ったり、観光振興をサポートしたり、海外に情報を発信したりするなど、広範囲な活動を展開している。

第四に「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」では、ハード・ソフトの両面でユニバーサルなサービスを促進することが一番の課題。

例えば移動に不自由のある方が自宅から目的地まで、スムーズに移動できるよう、産官学共同での仕組みづくりに取り組む。すでに「一括サポート手配」の実証実験が行われているという。

これら活動内容はすべてウェブを中心に発信されている。ご高覧を!「社内でもSDGs機運はかなり高まっています。自発的にセミナーやワークショップに参加する社員も多いですね。さらに、活動がより盛り上がることを期待して、今年、各グループ会社でSDGs推進者を任命したほか、取り組み事例を社内ポータルで共有する、アワードを実施するなどしています」

ANAはどんな「夢にあふれる未来」を現出させてくれるのか。ESG経営の今後に注目したい。

●ANAホールディングス
TEL 03-6735-5555
https://www.ana.co.jp/group/

What is luxury?

What is luxury?

Questioning this has now become synonymous with confronting the times. We are now witnessing a transformation of values on a global scale.
Sustainable, SDGs, ESG...... these terms are becoming a natural part of our daily lives. Many brands and companies have already begun to take this stance, as individuals and society as a whole are expected to become more aware of the importance of sustainability. In "NILE PORT," we would like to rethink and re-present luxury in the current era, sharing our values with brands and readers who have a progressive awareness.